『「センスで負けない。」古き良き鹿児島の味を県外に発信する老舗醸造メーカーの試み』 吉村醸造株式会社 代表取締役社長 吉村康一郎 インタビュー:2015年3月16日 鹿児島市街地から国道3号を北上すると、突然に現れる黒いおしゃれな建物。道路の両サイドから、直売店と本社事務所が向き合っている。いちき串木野に根ざして八十有余年。サクラカネヨのブランドで知られる吉村醸造を訪ねた。古き良き鹿児島の味にこだわる四代目社長に醤油・出汁・ソース(!)について、お話を伺った。 創業昭和初期。 鹿児島の味覚に合わせ、当たり前のものを当たり前に作るスタイルを貫く。 ー本日はよろしくお願いします。早速ですが、まず御社の歴史と創業から現在に至るまでの取り組みなどを教えて下さい。 創業は昭和二年です。創業当初から現在の場所で続けています。最初は醤油と味噌の販売・製造がメインですね、私で四代目です。二代目が現在の会社規模まで大きくしたと聞いています。それまでは、ほぼ家族だけで切り盛りしていたそうです。 本社外観 ー創業当初から広い地域で展開されていたんでしょうか。 いえ、地域としては串木野だけですね。鹿児島と出水と加治木に支店がありまして、ここからも配達をしています。 ー二代目の社長は行動力のある方だったんですね。面白いエピソードはありますか。 積極的だったとは聞いています。とにかく研究熱心な人だったそうです。自分でもの作りもしますし、営業もします。結構こだわるタイプだったみたいですね。お茶を入れる時も温度を測ったりですね。今もうありませんが、お得意先でもあった、のぼる屋というラーメン屋さんが鹿児島市内にありまして、そこの一杯千円のラーメンが好きで、毎日でも食べに行っていたらしいです。 ー串木野からですか!? 串木野から。 ーすごい行動力ですね。 風邪ひいた日もお持ち帰りで持って来させてたらしいんですよ。それぐらい、好きになると相当熱中するタイプですよね。1927年頃の話ですね。 ー創業当時からこちらの場所で営業されていて、遠方への販売とはどのようにされていたんですか。 加治木支店を作り、あとは鹿児島と出水ですね。二代目は鹿児島県内の拠点を増やしていきました。通販は自然に増えましたので、特に力を入れてはきてないですね。 ー人気の商品や、商品に対するこだわりの部分はどういったものがありますか。 濃口の甘露という商品が一番人気ですね。醤油の5割以上を甘露が占めていると思います。 ー当時はどのように配達されていたんでしょうか。 当時は木樽に入れて配達していたみたいですけど、瓶ができて、ペットボトルができて、どんどん木樽もなくなっていったみたいですね。 ー一番人気の甘露も含めて、御社の独自性はどういった部分におありですか。 独自性というのは難しくて、鹿児島の味覚に合わせているという点でしょうか。鹿児島の料理は甘辛いものが多いので、旨味が強く味が濃い料理に合うように作っています。当たり前のものを当たり前に作っているという感じですね。鹿児島の醤油のベースは同じなんです。隼人に組合の工場があって、その醤油を各メーカーが仕入れています。そして各メーカーが砂糖や調味料をブレンドして出荷しているので、味に大きな差はありませんが、若干甘さに差があるかなとは思います。組合ができたのが、50年ほど前らしいです。それまでは各メーカーが原料からもろみを作っていたらしいですが、かなり大変な作業だったみたいで、「将来の働き手がいなくなる」という危機感もあって、共同出資で隼人に工場を作ったんですよ。サービスに関しては、個人のお客様に弊社のスタッフが御用聞きをしていまして、各家庭を訪問して販売をしています。個人・家族規模の醤油屋さんは今でもしていることですが、弊社規模での御用聞きは少ないと思います。 ー戸別訪問はずっとされているのでしょうか。 そうですね、30年程だと思います。現在8000世帯くらいのお客様がいらっしゃいます。訪問専任のスタッフも13名います。 吉村醸造の商品の一部 地元の人々に素材の美味しさを体験して欲しい ー今回出汁プロにご参加されたきっかけは何ですか。 はい、たしか2年ぐらい前に、天文館でトークショーをされたと思うんですよ、岡本さんとか中原さんとかの。それを聞きに行ったのが先か、川辺で開催されたグッドネイバーズジャンボリーに出汁プロジェクトで参加されたりとかで存在を知って、トークショーを聞いたときに、中原さんに私も参加できないか聞いたんですけど、そのときは返事いただけなくて。その後募集されてましたよね?それで、やってみようかなと思いました。 そのトークショーで、どんなところが面白いと思って参加してみようと思ったんですか。 出汁と醤油って関係が深いと思うので、まだまだいろんな可能性があるのかなと思っていました。せっかく鹿児島で鰹節をたくさん作っているのに、実際に鰹節を使っている人はそんなにいないと思うんですよ。味噌汁も鰹節で出汁を取る人より、いりこの方が多いと思うんですよ。 鰹節は手間がかかりますからね、いりこだとすぐなんですけど。 値段的なものもあるんですか。鰹節の方が高いんですかね。 値段よりは手間だと思いますね。 だからもったいないなぁって思って。せっかく良いものがあるのに、地元の人たちが使わないのは、もったいない気がしてました。 ー吉村さんはご自宅で、鰹で出汁を取られますか。 鰹といりこと両方使いますね。 ーどういったことを広めていきたいか、具体的にお勧めしていきたいものはありますか。 そうですね、みなさん味噌汁を食べると思いますが、ご飯派の人は多分鰹節から出汁を取る人はあまりいないと思うんですね。大体の人が本だしとかだと思うんですけど、でも鰹節から取る出汁ってすごくおいしくて。そのことに気付いたのはじつは茶節ってありますよね。あれを直売所で販売しているんですけど、試食の時に出汁の香りがすごく強くて、「鰹節ってこんなにおいしいんだ」って気付きました。一回それを体験すれば今よりももっと出汁に関わる人が増えていくのかなと思います。やっぱりおいしいものを食べるっていうのは、「明日も食べたい」「また食べたい」となりますから、それで味噌の消費量も増えていけば嬉しいなと思っています。 ー鰹で出汁を取る人が少ないことを実感されるのはどんな時ですか。 そうですね、8年ぐらい前の話ですが、地元のスーパーで働いていたんです。そのときは本だしの方が売れてましたからね。安いこともありますしね。 ー実体験がおありだったわけですね。 そうですね、うちのスタッフに聞いても、節から出汁を取る人は少ないんですよね。 ー先ほど、加治木の醤油の話がありましたが、吉村醸造ならではの醤油の特徴について改めてお聞きしてもいいですか。 しいて言えば甘さ控えめな点ですかね。 ー鹿児島では甘さが控えめということですか。 はい、そうです。鹿児島では甘さ控えめですね。甘さの加減と旨味の加減をどうするかという部分ですね。 ー創業された頃から鹿児島独特の甘醤油の取り扱いはありましたか。 なぜ甘いのか諸説ありますけど、料理にたくさん砂糖を使っていたみたいで、醤油に混ぜて、ひと手間省くということでカネヨさんが作ったと聞いたことはあります。元々は鹿児島の醤油も辛かったみたいですからね。 デザインの力で新たな顧客層を開拓した「第3のソース」 第3のソースシリーズ ー第3のソースは醤油屋が作ったソースという点でもおもしろいコンセプトですが、開発のきっかけを教えていただけますか。 鹿児島県内から県外に出て行こうという会社の方針があります。本当は醤油を売りたいんですけど、鹿児島の醤油は甘いのでなかなか九州外の方には受け入れてもらえないことがありました。「だったらソースを売ってみよう」となって、今はソースに力を入れてますね。 ー評判はいかがですか。 おかげさまで県外のバイヤーさんも面白がってますね。飲食店さんにも興味を持っていただいて、少しずつ県外でも売れるようになってますね。中身だけでなく見た目(デザイン)にも力を入れてます。見た目も大事だなと最近すごく思いますね。 ー「第3のソース」ってすごくおもしろくて、素敵ですが、開発過程で決まったネーミングですか。 トンテキをご存知ですか?三重の四日市のご当地グルメですけど、分厚い豚肉を低温の油でゆでて、それをまたフライパンで焼いて最後にソースを回しかけてジューと焦がして出す料理用に作ったソースです。でもトンテキソースという商品名にピンとこないじゃないですか。だからもっとインパクトのある名前にしようということで決まりました。 ー開発と拡販だと拡販の方が醤油味噌以外では難しいと感じられますか。 どっちも難しいですけどね。最近になって県内の商談会とかに出るようになりました。うちは県外に通用するような目玉商品がなくて。よく聞かれたのは、「吉村醸造さんらしさって何ですか」ということでした。返事に困りましたね。当たり前のものを当たり前に作っていたので相手にされませんでしたが、第3のソースやとんかつブラックを持って行くようになると関心を持ってもらえましたね。見た目と商品名のユニークさに加えて味もおいしいと思うので、以前よりは拡販に関してはハードルが低くなりました。ただ売れ続けないと意味がないので、リピートして頂けるかということが不安ですね。 ーどういった年代の方に売れていますか。 若い方ですね。見た目がこれなので。 ー第3のソースというネーミングですが、第1・第2は何が該当しますか。 第1・第2はとんかつソースとウスターソースですね。第3のソースは中濃ソースです。 ー今後取り組んでみたい企画や新商品開発があれば教えてください。 醤油屋なので醤油で何か新製品を作りたいという思いはありますが、みその原料がほぼ中国産なので、一部の商品で国産大豆で作るですとか、もっと高く売れる商品を作りたいですね。 本社正面にある直売所。醤油の量り売りもしている。 ー例えば、「これまでなかったものを作りたい」とか開発のメージはおありですか。 そうですね、原料にこだわった商品を作りたいというのはありますが、新商品はなかなか難しいですね。 ーブランドビジュアルは戦略的に洗練された古き良きものをメッセージとして発信していく方向性ですか。 そうですね、その方がお客様にも伝わりやすいと思います。 ー今後の展望や吉村醸造のビジョンを表す言葉があれば教えてください。 そうですね、かっこいいというかおしゃれな感じは出していきたいっていうのはありますね。センスみたいなものは負けたくないというのはありますね。 ー本日はありがとうございました。 ありがとうございました。 インタビュー後記: 取材の後に道路向かいのかわいい直売店へ立ち寄った。商品がきれいに並べられている。ソフトクリームが人気らしい。雑貨も充実していて楽しいが、デザイン素材はすべて醤油。 こうした吉村社長のセンスから新たなスタンダードが生まれるのが楽しみだ。 インタビュアー 横田千恵美 ライター 西田将之 コメントは受け付けていません。
『「センスで負けない。」古き良き鹿児島の味を県外に発信する老舗醸造メーカーの試み』 吉村醸造株式会社 代表取締役社長 吉村康一郎 インタビュー:2015年3月16日 鹿児島市街地から国道3号を北上すると、突然に現れる黒いおしゃれな建物。道路の両サイドから、直売店と本社事務所が向き合っている。いちき串木野に根ざして八十有余年。サクラカネヨのブランドで知られる吉村醸造を訪ねた。古き良き鹿児島の味にこだわる四代目社長に醤油・出汁・ソース(!)について、お話を伺った。 創業昭和初期。 鹿児島の味覚に合わせ、当たり前のものを当たり前に作るスタイルを貫く。 ー本日はよろしくお願いします。早速ですが、まず御社の歴史と創業から現在に至るまでの取り組みなどを教えて下さい。 創業は昭和二年です。創業当初から現在の場所で続けています。最初は醤油と味噌の販売・製造がメインですね、私で四代目です。二代目が現在の会社規模まで大きくしたと聞いています。それまでは、ほぼ家族だけで切り盛りしていたそうです。 本社外観 ー創業当初から広い地域で展開されていたんでしょうか。 いえ、地域としては串木野だけですね。鹿児島と出水と加治木に支店がありまして、ここからも配達をしています。 ー二代目の社長は行動力のある方だったんですね。面白いエピソードはありますか。 積極的だったとは聞いています。とにかく研究熱心な人だったそうです。自分でもの作りもしますし、営業もします。結構こだわるタイプだったみたいですね。お茶を入れる時も温度を測ったりですね。今もうありませんが、お得意先でもあった、のぼる屋というラーメン屋さんが鹿児島市内にありまして、そこの一杯千円のラーメンが好きで、毎日でも食べに行っていたらしいです。 ー串木野からですか!? 串木野から。 ーすごい行動力ですね。 風邪ひいた日もお持ち帰りで持って来させてたらしいんですよ。それぐらい、好きになると相当熱中するタイプですよね。1927年頃の話ですね。 ー創業当時からこちらの場所で営業されていて、遠方への販売とはどのようにされていたんですか。 加治木支店を作り、あとは鹿児島と出水ですね。二代目は鹿児島県内の拠点を増やしていきました。通販は自然に増えましたので、特に力を入れてはきてないですね。 ー人気の商品や、商品に対するこだわりの部分はどういったものがありますか。 濃口の甘露という商品が一番人気ですね。醤油の5割以上を甘露が占めていると思います。 ー当時はどのように配達されていたんでしょうか。 当時は木樽に入れて配達していたみたいですけど、瓶ができて、ペットボトルができて、どんどん木樽もなくなっていったみたいですね。 ー一番人気の甘露も含めて、御社の独自性はどういった部分におありですか。 独自性というのは難しくて、鹿児島の味覚に合わせているという点でしょうか。鹿児島の料理は甘辛いものが多いので、旨味が強く味が濃い料理に合うように作っています。当たり前のものを当たり前に作っているという感じですね。鹿児島の醤油のベースは同じなんです。隼人に組合の工場があって、その醤油を各メーカーが仕入れています。そして各メーカーが砂糖や調味料をブレンドして出荷しているので、味に大きな差はありませんが、若干甘さに差があるかなとは思います。組合ができたのが、50年ほど前らしいです。それまでは各メーカーが原料からもろみを作っていたらしいですが、かなり大変な作業だったみたいで、「将来の働き手がいなくなる」という危機感もあって、共同出資で隼人に工場を作ったんですよ。サービスに関しては、個人のお客様に弊社のスタッフが御用聞きをしていまして、各家庭を訪問して販売をしています。個人・家族規模の醤油屋さんは今でもしていることですが、弊社規模での御用聞きは少ないと思います。 ー戸別訪問はずっとされているのでしょうか。 そうですね、30年程だと思います。現在8000世帯くらいのお客様がいらっしゃいます。訪問専任のスタッフも13名います。 吉村醸造の商品の一部 地元の人々に素材の美味しさを体験して欲しい ー今回出汁プロにご参加されたきっかけは何ですか。 はい、たしか2年ぐらい前に、天文館でトークショーをされたと思うんですよ、岡本さんとか中原さんとかの。それを聞きに行ったのが先か、川辺で開催されたグッドネイバーズジャンボリーに出汁プロジェクトで参加されたりとかで存在を知って、トークショーを聞いたときに、中原さんに私も参加できないか聞いたんですけど、そのときは返事いただけなくて。その後募集されてましたよね?それで、やってみようかなと思いました。 そのトークショーで、どんなところが面白いと思って参加してみようと思ったんですか。 出汁と醤油って関係が深いと思うので、まだまだいろんな可能性があるのかなと思っていました。せっかく鹿児島で鰹節をたくさん作っているのに、実際に鰹節を使っている人はそんなにいないと思うんですよ。味噌汁も鰹節で出汁を取る人より、いりこの方が多いと思うんですよ。 鰹節は手間がかかりますからね、いりこだとすぐなんですけど。 値段的なものもあるんですか。鰹節の方が高いんですかね。 値段よりは手間だと思いますね。 だからもったいないなぁって思って。せっかく良いものがあるのに、地元の人たちが使わないのは、もったいない気がしてました。 ー吉村さんはご自宅で、鰹で出汁を取られますか。 鰹といりこと両方使いますね。 ーどういったことを広めていきたいか、具体的にお勧めしていきたいものはありますか。 そうですね、みなさん味噌汁を食べると思いますが、ご飯派の人は多分鰹節から出汁を取る人はあまりいないと思うんですね。大体の人が本だしとかだと思うんですけど、でも鰹節から取る出汁ってすごくおいしくて。そのことに気付いたのはじつは茶節ってありますよね。あれを直売所で販売しているんですけど、試食の時に出汁の香りがすごく強くて、「鰹節ってこんなにおいしいんだ」って気付きました。一回それを体験すれば今よりももっと出汁に関わる人が増えていくのかなと思います。やっぱりおいしいものを食べるっていうのは、「明日も食べたい」「また食べたい」となりますから、それで味噌の消費量も増えていけば嬉しいなと思っています。 ー鰹で出汁を取る人が少ないことを実感されるのはどんな時ですか。 そうですね、8年ぐらい前の話ですが、地元のスーパーで働いていたんです。そのときは本だしの方が売れてましたからね。安いこともありますしね。 ー実体験がおありだったわけですね。 そうですね、うちのスタッフに聞いても、節から出汁を取る人は少ないんですよね。 ー先ほど、加治木の醤油の話がありましたが、吉村醸造ならではの醤油の特徴について改めてお聞きしてもいいですか。 しいて言えば甘さ控えめな点ですかね。 ー鹿児島では甘さが控えめということですか。 はい、そうです。鹿児島では甘さ控えめですね。甘さの加減と旨味の加減をどうするかという部分ですね。 ー創業された頃から鹿児島独特の甘醤油の取り扱いはありましたか。 なぜ甘いのか諸説ありますけど、料理にたくさん砂糖を使っていたみたいで、醤油に混ぜて、ひと手間省くということでカネヨさんが作ったと聞いたことはあります。元々は鹿児島の醤油も辛かったみたいですからね。 デザインの力で新たな顧客層を開拓した「第3のソース」 第3のソースシリーズ ー第3のソースは醤油屋が作ったソースという点でもおもしろいコンセプトですが、開発のきっかけを教えていただけますか。 鹿児島県内から県外に出て行こうという会社の方針があります。本当は醤油を売りたいんですけど、鹿児島の醤油は甘いのでなかなか九州外の方には受け入れてもらえないことがありました。「だったらソースを売ってみよう」となって、今はソースに力を入れてますね。 ー評判はいかがですか。 おかげさまで県外のバイヤーさんも面白がってますね。飲食店さんにも興味を持っていただいて、少しずつ県外でも売れるようになってますね。中身だけでなく見た目(デザイン)にも力を入れてます。見た目も大事だなと最近すごく思いますね。 ー「第3のソース」ってすごくおもしろくて、素敵ですが、開発過程で決まったネーミングですか。 トンテキをご存知ですか?三重の四日市のご当地グルメですけど、分厚い豚肉を低温の油でゆでて、それをまたフライパンで焼いて最後にソースを回しかけてジューと焦がして出す料理用に作ったソースです。でもトンテキソースという商品名にピンとこないじゃないですか。だからもっとインパクトのある名前にしようということで決まりました。 ー開発と拡販だと拡販の方が醤油味噌以外では難しいと感じられますか。 どっちも難しいですけどね。最近になって県内の商談会とかに出るようになりました。うちは県外に通用するような目玉商品がなくて。よく聞かれたのは、「吉村醸造さんらしさって何ですか」ということでした。返事に困りましたね。当たり前のものを当たり前に作っていたので相手にされませんでしたが、第3のソースやとんかつブラックを持って行くようになると関心を持ってもらえましたね。見た目と商品名のユニークさに加えて味もおいしいと思うので、以前よりは拡販に関してはハードルが低くなりました。ただ売れ続けないと意味がないので、リピートして頂けるかということが不安ですね。 ーどういった年代の方に売れていますか。 若い方ですね。見た目がこれなので。 ー第3のソースというネーミングですが、第1・第2は何が該当しますか。 第1・第2はとんかつソースとウスターソースですね。第3のソースは中濃ソースです。 ー今後取り組んでみたい企画や新商品開発があれば教えてください。 醤油屋なので醤油で何か新製品を作りたいという思いはありますが、みその原料がほぼ中国産なので、一部の商品で国産大豆で作るですとか、もっと高く売れる商品を作りたいですね。 本社正面にある直売所。醤油の量り売りもしている。 ー例えば、「これまでなかったものを作りたい」とか開発のメージはおありですか。 そうですね、原料にこだわった商品を作りたいというのはありますが、新商品はなかなか難しいですね。 ーブランドビジュアルは戦略的に洗練された古き良きものをメッセージとして発信していく方向性ですか。 そうですね、その方がお客様にも伝わりやすいと思います。 ー今後の展望や吉村醸造のビジョンを表す言葉があれば教えてください。 そうですね、かっこいいというかおしゃれな感じは出していきたいっていうのはありますね。センスみたいなものは負けたくないというのはありますね。 ー本日はありがとうございました。 ありがとうございました。 インタビュー後記: 取材の後に道路向かいのかわいい直売店へ立ち寄った。商品がきれいに並べられている。ソフトクリームが人気らしい。雑貨も充実していて楽しいが、デザイン素材はすべて醤油。 こうした吉村社長のセンスから新たなスタンダードが生まれるのが楽しみだ。 インタビュアー 横田千恵美 ライター 西田将之