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『九州の鶏文化が生んだ種鶏にこだわった商品で勝負。』

南薩食鳥の日高さんの写真

南薩食鳥株式会社 商品開発課課長 日高伯昌

インタビュー:2015年3月18日

鹿児島茶の産地として有名な鹿児島県南部の知覧町。のどかな茶畑の風景をくぐり抜けて進んだ先に、堂々と広がる食品企業らしい清潔な佇まいの本社を訪ねた。種鶏シェア国内トップの南薩食鳥。非常に厳しいハラル認証(※)を取得している企業でもある。こだわりの原料と設備から提供されてきた鶏製品とその歴史、出汁関連商品の取り組みについてもお話しを伺った。

南薩食鳥の本社外観の写真

本社外観

九州において圧倒的なシェアを誇る鶏肉製造販売のリーディングカンパニー

ーこんにちは。本日はよろしくお願いします。早速ですが、御社について社歴など教えて下さい。

南薩食鳥・エヌチキンと二社がありまして、私が所属しているのは南薩食鳥で販売会社です。そして、鶏の処理・加工をしているのがエヌチキンという会社です。エヌチキンで製造した商品を南薩食鳥が販売しています。南薩食鳥が1979年設立です。エヌチキンは2012年から株式会社ですが、農事組合法人エヌチキンという組織が前身です。会社としては36年目に入ります。また当社は飼育には直接は携わっていません。契約農家さんにお願いしています。私どもが製造している鶏は、スーパーで売られている若鶏とかではなく、それの親になる種鶏と呼ばれる鶏と、卵を産む鶏(こちらは親鶏と呼びます)ですね。この2種類をメインで扱っています。

ースーパーで売られている鶏は種鶏ではないのでしょうか。

若鶏と呼びますが、業界ではブロイラーと言いますね。ブロイラーの日齢50日前後です。私どもが扱っている種鶏が日齢450日、親鶏に至っては日齢750日ほどにもなります。鶏は飼育日数が増すと旨味成分のイノシン酸やグルタミン酸が増えていきます。その反面、肉質もしっかりしてくるのでどうしても固くなってしまいますが、種鶏じゃないと合わない料理、鹿児島はやっぱり鶏刺ですよね。若鶏よりも種鶏の方が人気がありますね。

南薩食鳥の黒さつま鶏燻製(盛り付けイメージ)の写真

黒さつま鶏燻製(盛り付けイメージ)

ーいま、鶏の生産量は鹿児島が1位ですよね。

若鶏の生産量が1位ですね。若鶏の生産量に応じて種鶏も多いですね。ただ、全国各地に養鶏業者さんがいらっしゃいますので、私どもは鹿児島県産だけでなく全国から成鶏を購入して、敷地内の処理場で処理をして製品化しています。鶏刺であったり、福岡のがめ煮、宮崎のモモ炭火焼など、需要が多いので、九州だけでは九州の消費量を賄い切れないですね。

ー黒さつま鶏についてはいかがですか。

私どものお取引先が飼育をされていて、依頼をされて処理をしています。黒さつま鶏は鹿児島の地鶏なので、すべて鹿児島県産です。

南薩食鳥の黒さつま鶏燻製の写真

黒さつま鶏燻製

ーブロイラーと種鶏の違いはいかがですか。

当社はブロイラーは扱っておりません。ブロイラーは国内で流通しているのが6億羽以上で種鶏は500万羽という貴重な鶏です。種鶏は長期間飼育ですのでエサ代もかかりますので価格も高いですね。種鶏の消費が圧倒的に多いのは九州で、年末には福岡・佐賀・大分あたりはお節用にがめ煮を作ることが多いのですが、九州北部にはものすごい量が出荷されていきますね。一方で九州南部は生食の文化が強く特に鹿児島ではとり刺し・たたきが多く食べられています。また宮崎を中心に炭火焼、もも焼きにも使われています。ブロイラーとの大きな違いは鶏本来の旨味とと歯応えを味わう事ができるという事でしょうか。

外国人需要にも対応可能な国際基準をクリア
バリエーション豊富な出汁関連商品

ーいわゆる出汁を取るチキンスープは種鶏が主流になりますか。

そうですね、種鶏と採卵鶏の親鶏ですね。いわゆる鶏ガラはブロイラーのものも多いのですが、種鶏の方が濃い味は出ますね。黒さつま鶏が一番濃いですね。

南薩食鳥の黒さつま鶏の出汁の写真

黒さつま鶏の出汁

ー黒さつま鶏は基本的にいわゆる平飼いだから味が濃いのでしょうか。

地鶏には地鶏としての規定がありまして、鶏の種類や飼育日数、飼育面積に対する飼育数が決められています。地鶏は黒さつま鶏や宮崎の地頭鶏、名古屋の名古屋コーチンなど全国各地にありますね。

ーハラル認証(※)を取得された経緯は何ですか。

マレーシアなど多宗教の国ではイスラムの方も多いですし、日本に来られた際に食べるものがないというところでホテルさんや機内食でも困ってらっしゃるみたいです。そこで私どもとしては鶏肉でお役に立てないかと考えたのがキッカケでした。ハラル対応のチキンスープも販売させていただいています。

ーいま加工されている他の商品についても教えて下さい。

袋の炭火焼などの常温商品も製造していますし、缶詰も作っています。業務用の冷凍製品も製造しています。鶏のハム・ソーセージも第二加工場で対応できるようになりまして、ここ2・3年の分野がハム・ソーセージ事業、そして常温品ですね。常温商品は、炭火焼が各種と手羽煮の缶詰ですね。缶詰は製造から3年間です。

ーその流れもあっての出汁プロへの参加なのですね。開発状況はいかがですか。

現在、黒さつま鶏のラーメンを開発しており、県内のスーパーさんに商談中ですね。最初はギフト商品でスタートしました。すっきりとした塩味の中に隠し味でコクをプラスしたあっさりの鶏塩ラーメンに仕上がっておりスープが麺によく絡みます。是非、召し上がって下さい。

南薩食鳥の黒さつま鶏ラーメン(盛り付けイメージ)の写真

黒さつま鶏ラーメン(盛り付けイメージ)

ーやっぱりスープの売りは新鮮なうちに時間をかけて出汁をだす部分が一番ですか。

そうですね、処理場が横にある私どもの強みですね。加工品を作るときは、解凍原料とチルド原料で比べるとチルドの方が綺麗で美味しいスープができます。鶏専門店さんにはチルドで鍋をご提案したり、常温では一般消費者の方に、というのを展開したいと思っています。

ー今後は直接的に一般消費者さんへの販売展開をされたいご意向がおありですか。

はい、していきたいというかしていかないといけないと捉えていますね。商品開発担当は私以外の2名は管理栄養士ですが、一般消費者の方に喜んでいただけるような商品開発をしていきたいですね。

ー最後になりますが、出汁関係では今後の展開の計画はおありですか。

そうですね、レトルト殺菌のメリットは、添加物をたくさん使わなくても殺菌できるところにありますので、シンプルな商品を作れますから、鶏本来のスープみたいな商品を常温品でできればいいですね。県外に売り込みに行くと「何で鹿児島なのに鶏なんだ?」と言われます。県外では黒豚のイメージが強いですから。黒さつま鶏ラーメンも動物系は鶏しか使っていませんが、少しだけ鰹と昆布のエキスを入れています。あくまでも鶏にこだわった商品で広く展開できるように、また、一般消費者さんにも直接お届けできるようにしていきたいですね。

ー本日はありがとうございました。

ありがとうございました。

※「ハラル認証」とは
食品や化粧品等の製品に対し、イスラム教が禁じているものを含まない規格を定め、原材料・製造工程・製品品質等を審査し、適合する製品にのみ与えられる資格。
イスラム教徒に対して、衛生面、品質面ともに安全なものであることを示す基準となるため、アジア市場へ展開する食品メーカー等が率先して取得している。

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インタビュー後記
肉から卵に至るまで、誰もが食べ慣れている食材である鶏。ブロイラーや地鶏という位しか知らなかったけれど、「種鶏」の特徴を知っておくと、口にする時の楽しみがより一層増えそうだ。厳しい国際基準の工場設備からは、「種鶏」40%もの国内シェアを生み出しているそうだ。後日、お土産にいただいた黒さつま鶏ラーメンをいただいたがあっさりした中にコクのあるスープがたまらなく美味しかった。

インタビュアー 井上秀幸

ライター 西田将之

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