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『”別格”である理由がたくさん詰まった鹿児島の出汁を試して欲しい。』

山口水産の取締役の写真

株式会社山口水産 取締役・企画開発室室長 山口大悟

インタビュー:2015年2月2日

桜島を望み、鹿児島市街地中心部からほど近いウォーターフロントエリア。
鹿児島市中央卸売市場魚類市場から伸びるように、水産会社が軒を連ねる一角がある。
創業60年を超える水産物卸の老舗、鹿児島県産水産物の価値向上に取り組む、株式会社山口水産。商品開発部門の舵を取る山口大悟さんに、鹿児島の水産物の魅力とその価値を活かした出汁関連商品の開発秘話などをお話いただきました。

奄美大島の漁師さん達だけが食べていた幻の味、本マグロのホルモン。
知る人ぞ知る屋久島産の上質なトビウオ。

ーこんにちは。今日はよろしくお願いします。
早速ですが、まず「山口水産」について教えて下さい。

今年で創業63年になります。私の祖父の代に創業しまして、水産の卸問屋をずっと営んできました。初めは鮮魚の露天商から始まりましたが、現在では水産の冷凍・鮮魚を含めた流通業を行っています。
取扱品目は幅広く、数千から数万品目に達します。お客様によってお取り引き商品はそれぞれですが、特にサーモン・エビ・カニ・マグロといったところが主な商品です。現在は鹿児島県内4営業所に加え、熊本・宮崎・大分を合わせまして7拠点で営業をしています。お取り引き先としては、鹿児島県内外のホテルや百貨店・飲食店・量販店をはじめ、数多くのお客様とお付き合いをさせて頂いています。

ー製造・販売を行う株式会社YSフーズを5年前に設立されたそうですが、製造部門を立ち上げたキッカケは何だったんでしょうか?

流通業としては、商品を仕入れて販売するというお仕事ですが、鹿児島県産水産物をより広く、より価値を持たせた形で流通させていくことを目指す中で、どうしても加工・製造という機能が必要と考えた結果、YSフーズを立ち上げるに至りました。鹿児島県の水産物は「素材がいい」というお話をバイヤーさんからもよく聞きます。その素材の良さをもっと広めたいという思いが大きなキッカケです。光栄なことに賞をいただく機会もありましたが、やはり消費者の需要・ニーズに合った商品づくりを心がけて日々取り組んでいます。

ー「山口水産」独自の商品はありますか?

自社商品としましては離島の水産物がメインでして、「屋久島産トビウオのあごだしシリーズ」と「奄美大島産本まぐろのホルモンシリーズ」を現在は積極的に取り扱っています。
★「奄美大島産本まぐろのホルモンシリーズ」は、「魚の国のしあわせFish-1グランプリ2014 FINAL」でグランプリ(最優秀賞)を受賞!
知らない方も多いと思うんですが、奄美大島は本まぐろの生産が日本一なんです。新鮮な状態じゃないと食べられないので、奄美大島の漁師さん達だけが食べていたという本まぐろのホルモンをご飯やお酒に合う味付けで作りました。
「屋久島産トビウオのあごだしシリーズ」は出汁を中心に大変に好評をいただいています。現在は、鹿児島県外の百貨店さんを中心にギフト商品としての販売を行っています。

山口水産の本まぐろのホルモンシリーズの写真

本まぐろのホルモンシリーズ

山口水産の屋久島のトビウオの写真

屋久島のトビウオ

山口水産の屋久島産トビウオのあごだしシリーズの写真

屋久島産トビウオのあごだしシリーズ

出汁づくりに手間隙を惜しまない。上品な香りと深い味わいを求めて。

ー「あごだし」を作られているということですが、出汁商品を作るに至ったキッカケは
何だったんでしょうか?

3年前に屋久島に事業所を立ち上げました。元々は急速凍結という処理で刺身用の商品づくりをメインに行っていたんです。屋久島には全国でも長崎と並んでトップクラスの漁獲量のトビウオがありますが、長崎に比べると全然知名度がないんです。屋久島で獲れるトビウオは非常に鮮度も良くて、品質の高いトビウオなのに、「なぜ屋久島産のトビウオは知名度が低いんだろう?」と考えた時に、鮮魚流通が大半を占めていたんです。鮮度が良いので刺身用としてしか流通していなくて、地元で加工される、ということがほとんどなかったんです。一方で長崎では地元で製造される加工品やメニューまで幅広くあったことから、知名度を上げるためには何か加工品を作らないといけないと考え、鹿児島ならではの「あごだし」を作ることになりました。ですが、私達は「出汁」については素人でしたので、私達は素材の善し悪しをお話して、山川や枕崎の事業者さんに協力をもらいながら商品化を進めました。

YSフーズのあごだしが買える「南国食材商店」はコチラ

ーあごだしの他に、出汁関連の商品はありますか?

ポン酢と濃縮タイプの出汁と味噌ですね。屋久島の売店さんに置いていただいたり、関東地方の高級スーパーさんでのお取り扱いが始まります。しばらくはこのラインナップで普及を進めたいと考えています。中でも粉末出汁の普及を優先して計画しています。

ー数々の商品を開発・販売されていますが、商品化までのプロセスは大変ですか?

大変ですね。味を決めて、価格を決めて、パッケージを決めて、と半年くらいはかかります。社内会議や商品開発担当のシェフからの進言から始まっていきます。シェフは元々フレンチで、熊本のホテルの総料理長をしていた人間ですので、味に関しては信頼しています。

ー最後になりますが、お伝えしたいことがあればどうぞ。

屋久島で獲れるトビウオは漁の仕方が他の地域とは違うんです。ほとんどが日帰り船で、だいたい朝の6時に獲りに行って、その日の昼12時には水揚げされるんです。2隻で行う囲い込み漁と呼ばれる方法で、生きたままのトビウオを〆て港に持ち帰ります。他の地域では刺し網といって、仕掛けた網を翌日に引き揚げる方法です。刺し網では、初めに獲れた魚と終わりに穫れた魚では、時間差が出てしまうので、鮮度に差がありますし、魚体に傷が付いてしまう傾向にもあります。屋久島で獲れるトビウオは、実際に刺し身で食べられる鮮度なので鮮魚流通していたわけなんですが、”本来は加工品になるべきではない鮮度をもった原料を使った出汁”ですので、雑味も臭みもありません。非常に上質な出汁だと思います。100%屋久島産のトビウオを使っているのがこだわりですね。そして薫製が鹿児島の特長です。他の地域は「焼き」なんですが、薫製の方が圧倒的に香りが良いです。あごだしは元々クセが少なくて上品な出汁ですが、薫製にすることで、旨味と香りが際立つ深い味わいが出ます。是非お試しいただきたいですね。

山口水産の囲い込み漁の写真

囲い込み漁の様子

山口水産のトビウオの薫製の写真

トビウオの薫製

ー今日はありがとうございました。

ありがとうございました。

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インタビュー後記:
出汁素材の鮮度を保つのに最適な囲い込み漁。出汁の旨味と香りを引き出す薫製。
出汁商品を生み出すまでの生産者の手間隙──。
普段何気なく囲んでいる鹿児島の食卓は、こんなにも血の通ったストーリーに溢れていたのかと、
この日の晩ご飯はいつも以上に「感謝の気持ち」を胸にいただきました。

日本南端で食材にこだわり抜くプロフェッショナル集団の存在を知り、
すっと背筋を伸ばしてみる─。

インタビュアー 井上秀幸

ライター 西田将之

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