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ヨッ!日本一の鍋。くろくまの美味しさは出汁と人にあった。

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HOTEL&RESIDENCE 南洲館 代表取締役 橋本龍次郎

料理長    西元広行

インタビュー 2015年9月28日

今や、鹿児島の美味しいもの好きな方に知らない人はいないと思える南洲館の鹿児島特選黒豚しゃぶ「くろくま」、2006年に山口県で開催された第21回国民文化祭イン山口・食の祭典「全国お国自慢鍋コロシアム」で総合優勝して日本一の鍋となりました。日本一に至るまでのご苦労と、人気の秘密を代表取締役の橋本龍次郎さんと料理長の西元広行さんにお話を伺いました。

くろくまの大きな鉄鍋は先代からの大事な遺産

ー橋本社長、本日はよろしくお願い致します。早速ですが、南洲館の歴史について教えていただけますか?

大正13年の11月に私の祖父が割烹旅館として創業しまして、今年で91年目を迎えます。

ホテルと長期滞在可能なレジデンススタイルにして、HOTEL&RESIDENCE南洲館という形にしたのが昭和59年で、今年で31年目ですね。

私の母が九州館という旅館におりまして、そこで「熊襲鍋」という名物料理がございました。

魚介を使った美味しい鍋でとても評判良かったのですが、九州館は残念ながら閉館したのです。実は母は南洲館に養子に入りまして、その縁で「熊襲鍋」自体を引き継ぎました。その時に現在「くろくま」で使っている大きな鉄鍋をもらい受けたんです。

その「熊襲鍋」中心に宴会料理等も出していたのですが、2003年の新幹線部分開通から鹿児島市にもB&Bスタイル(宿泊と朝食)のホテルが増えて、南洲館の経営にも厳しさが増して参りました。

そこで何か新しい名物料理を開発しようと思い、業界内外の先輩や友人の助言や協力を得て、現在のくろくま鍋の原型を創り上げたんです。

それでも最初は泣かず飛ばず、何とか箔をつけようと「鍋コロシアム」に参加して幸運にも総合優勝を遂げる事が出来ました。それでもすぐには火が付いた訳ではなく、MBCラジオで取り上げてもらってから徐々にマスコミや口コミで評判になり今を迎えています。

最近は市内の地場のホテル経営者と「フロワーズ」といった共同企画にも取り組んでいますし、海外からのお客さんも多く訪れていただけるようになりました。

ー本当に大きな鍋ですよね。鍋自体に熊襲鍋と書いてありますが、熊襲ってどういう意味なんですか?

はい、私もそんなに詳しいわけではないですが、今でも隼人町に「熊襲の穴」という熊襲族の居住した洞穴が残っているみたいですね。古代、南九州にいた部族で大和朝廷から派遣されたオウスノミコト(ヤマトタケルの幼名とも言われる)に征伐されたという神話が残っています。

凄く武力のある部族だったらしく、その首領に女装したオウスノミコトが酒を飲ませて酔わせてから殺害したらしいですね。

そういう勇猛で豪快なイメージにあやかる意味で「熊襲鍋」と名付けたらしいです。

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大きな鉄鍋を使ってホテルの危機脱出へ!

ー当初はこの鉄鍋で海鮮系の「熊襲鍋」を出されてたんですね。

ええ、そうなんです。当時はまだ割烹旅館的な位置づけも合って、宴会で豪快な海鮮鍋として「熊襲鍋」をお出ししていました。

しかし、新幹線の部分開通から競合の県外資本ホテルがドンドン新装されて、当社の経営が厳しくなってきました。私の父は宴会や夕食は止めて、宿泊と朝食だけにしようという意見でした。

そこで私は業界内外の先輩や友人に相談して回ったのですが、その中の一人の方が「お前のとこには立派な鉄鍋があるじゃないか、それを使って名物料理を作ったらいいんじゃないか」というアドバイスをいただきました。

先輩方は私を連れて、色んな料理を食べさせて下さいました。そうして最終的に黒豚のしゃぶしゃぶに取り組むことになったのです。

ー最初から今の形でスタートされたのですか?

いいえ、最初は先輩たちからの教えもあって美味しい水に昆布を浸して出汁を出して、そこへ黒豚の脂身で甘さを加え、塩とブラックペッパーで調味していました。食べ歩きの際に中華料理にレタスを使っているのにヒントを得て、レタスも入れましたが現在の様な使い方ではありませんでした。

ーそこで「鍋コロシアム」に挑戦されたんですか?

いいえ、出汁に関しては料理長と喧々諤々やりながらオリジナルの野菜ベースのスープを
開発してトライしたんです。このスープについては料理長に聞いて下さい。

いいスープが出来たのですが、まだまだ認知もされずどうしようかと思っておりまして、ここは千載一遇のチャンスだと思って、父が入院中だったにも関わらず、料理長とスタッフと4名でおはら祭終了後に徹夜で車を走らせて山口まで行きました。

3日間で30種類の鍋が出されて各日毎に優勝の鍋があって、私たちは3日目の優勝となったんですね。そして最後に3日間を通した総合優勝という大きな評価をいただく事が決まった時には料理長共々大喜びしました。

ー「日本一の鍋」になったのは、どこが評価されたのですか?

地元のふぐちりとか北海道の石狩鍋とか有名な鍋も出てたのですが、どこも組合とか団体で出ている所が多く、ズンドウ鍋からお椀でサービスと言う形でした。

うちはズンドウ鍋は後ろに置いて、あの「鉄鍋」でお見せしてしゃぶしゃぶと豚飯(今や裏メニュー化されたお茶漬け)の二種類でサーブしたんですが、黒豚のしゃぶしゃぶもまだ珍しい事とおもてなしの部分だったようです。

このおもてなしの精神は今も一つの鍋にスタッフがキッチリついてサービスするという流れになっています。

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料理長が全てをかけて完成させた出汁スープ

ーそれでは西元料理長にお伺いします。現在のスープの開発秘話をお聞かせ下さい。

そうですね。海鮮の「熊襲鍋」は寒い時期はいいのですが、それ以外の時期は厳しいものだから黒豚のしゃぶしゃぶをやる事になったのですが、なかなかスープが決まらない。

社長とも喧々諤々やってたんですが、社長から野菜を使って見たらどうかと言う話が出まして、取り組み始めました。

最初は7種類の野菜を2時間程煮込んでみたのですが、なかなかいい味が出ない。そこで煮込む時間を倍以上にしました。

そして昆布とかつおで取ったお出汁と合わせてみたんですね。

そうしたら結構いい味になる。そこに酒と塩・醤油だけで調味して、野菜の甘さを引き出す事に成功しました。

ただ野菜の量、煮込む時間、合わせる量などによって安定させるのに半年以上かかりました。

ーこのスープは他の方でも作れるのですか?

いいえ、先程お話したように微妙な調整が多いので現時点では他のスタッフに作る事はできません。また、このスープは長持ちしない(通販用は冷凍で1ヶ月は持つそうです)ので、その日その日で朝から半日かけて作り、夕方また調整するという繰り返しです。

ですから私が休めるのはくろくまの予約が入ってない日位ですね。

それでも私もいい年ですので、そろそろ後継者を入れて半年くらいかけて教え込もうと思っております。

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くろくまを世界へ!

ーそれでは再び橋本社長にお伺いします。くろくまという名前はどうしてつけたんですか?

実は黒豚の「くろ」と熊襲鍋の「くま」を合わせて「くろくま」なんですが、鹿児島の有名な冷菓である「白くま」にあやかりたいという思いもありました。

うちでは最後のデザートとして「白くま」アイスをご提供しているんですよ。

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ー「日本一」になられてからこれまでの経緯をお聞かせいただけますか?

実は日本一を取って鹿児島に帰ってもほとんど知られていないので、マスコミ各社にプレスレリースを出しました。最初MBCラジオが取り上げてくれまして、そうしたら南日本新聞が夕刊、朝刊と記事を書いていただき、その後業界内外、行政の方々の応援もありましてマスコミ、イベントにも多数出店し、口コミ効果も併せて現在の人気をいただけるようになりました。

その途中、スタッフのお疲れ会で「くろくま」を食べながらアイデア出しをして、現在のレタスの見せ方や〆のラーメンの見せ方等工夫して参りました。

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ー最後に出汁プロジェクトとの関わりと今後の抱負をお聞かせ下さい。

うちのお肉を仕入れている島田屋さんなど昔からの仲間がプロジェクトに参加しているのは知ってました。「和食」が世界遺産になって、注目されていく中、うちも「くろくま鍋」では出汁にこだわっているので、今後に向けて色々と勉強して行きたい思い入りました。

私はやりたがりで、これまでも山芋をつかったかるかん鍋にトライしたり、ソルトプラント、餃子、和牛等を鍋にできないかを考えてきました。ただ周囲から当面はシンプルに「くろくま」に専念した方がいいと言われて、くろくまのアピールに力を入れて来たんです。

ただ、来年の11月でくろくまも10年目ですので、今の出汁をベースとしながら新たな素材を使った鍋を開発したいと思っております。

今年は県の支援も受けて、台湾や香港など海外からのインバウンド誘致に向けて海外の展示会などにも出ておりますので、より多くの海外のお客様に日本のお鍋と言えば「くろくま」と言っていただけるようになりたいと思っています。

また、これまでこじんまりとやっていた「くろくま」の通販ですが、新たに可愛いパッケージを開発したので、県外の皆様にもお手軽に楽しんでいただければ嬉しいですね。

ー本日はありがとうございました。

ありがとうございました。

 

南洲館のHPはコチラ

南洲館の「くろくま」が買える「南国食材商店」はコチラ

インタビュアー 横田千恵美

ライター  井上秀幸

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