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本物は本物を知る「世界的イタリアンシェフと本場枕崎かつお節のランデヴー」

福島洋子の出汁レポート第1回

去る7月1日(月)、イタリア料理の奥田政行シェフと,かごしまイタリアン会の若手シェフらが枕崎のかつお節工場にやって来た。奥田シェフはイタリアスローフード協会から世界の料理人1000人に選出される(日本からは11人)著名なシェフ。奥田シェフの料理のモットーは、「ソースをなるべく使わない」こと。素材の味を大切にして、現在、出身地の山形県をはじめ東京銀座(監修)、スカイツリー内(監修)に店舗を展開。

まず、昔ながらの製法を守る的場水産鰹節工場での製造工程の見学からスタート。奥田シェフらは、鰹の解体から本枯れ節のカビ付けまでの全工程に質問を投げかけ、かつお節は当然ながら解体後の内臓なども手にとり、これまでの経験・知識に五感も総動員して食材を知り尽くそうとする姿がみられた。
次の枕崎おさかなセンターでは、午後の試食会用のメニューに組み合わされていくのであろう鰹の加工品や水揚げされたばかりの鮮魚が奥田シェフによって選ばれていく。
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次は、枕崎市美山町の自然に囲まれたNPO法人子育てふれあいグループ”自然花”の民家をお借りして出汁や船人飯を味わった。まずは、かつお出汁の引き方を削り方、節や昆布との組合せ、水の種類、火加減、温度、秒単位の時間、引いた後の味の変化等ととことん追求している中原水産の中原さんらが目の前で引いてくれるかつお出しをいただく。最高の本枯れ節の香りと味を堪能する。また、原料とその出汁が並べられたブースでは本枯れ節をはじめ5つの出汁の味ききや、普段は中々見られない出汁の原料を見ることできた。ここでも奥田シェフは自らかつお節を削り、出汁を味わい出汁ごとに旨味、酸味などの度合いを5段階で評価しながら味をきき比べていく。

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ツアーの最後は、鹿児島市内の日本ガス「キッチンスタジオ ほのほの」で、奥田シェフとかごしまイタリアン会の若手シェフらによるかつお節や鹿児島の食材をフルに使ったメニュー考案と試食会。若手シェフらとコラボし料理が1品1品作られていく。かつお出汁は下味や隠し味に、鰹の塩辛はアンチョビのようにパスタソースに加えられる。なまり節はにんにくと組み合わせられパスタの具に相性抜群。すべての料理が食材の持ち味を生かした飽きの来ない味に仕上がっている。
さらに、奥田シェフは、かつお節工場で今まで処分していた焙乾後の荒節からでる骨やヒレなどのかすも見逃さずキッチンスタジオに持ち帰っていた。これを粉末にして屋久島の野生鹿のローストにまぶす。屋久鹿の肉は、焙乾中の樫の木やクヌギのよい香りで燻煙された荒節の粉に包まれ獣肉臭が中和されてまるでスモークされたような絶妙な味に仕上がっていた。



美味しいかつお出汁は、削り立てのかつお節でとった引き立ての出汁の香り、旨味を味わうのが一番である。これは、奥田シェフの言葉「料理は口に入れる一瞬が命。」に通じるのではないだろうか。「その一瞬のために長い時間をかけて研究し、命をかけている」とシェフはいう。かつお節づくりの職人たちは、本枯れ節が出来上がるまでに半年から1年以上かけてわが子を育てるように心と手をかけ向き合っている。かつお節づくりの職人たちの思い、奥田シェフ、若手シェフらの食材や料理にかける思いが伝わってきた。
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的場水産鰹節工場では、本枯れ節が出来上がるまでの全工程に丁寧な説明をいただきかつお節づくりに対するこだわりとご苦労に触れ、美味しいかつお出しを届けたいというと誇りと熱い思いを感じた。枕崎おさかなセンターでは鰹の加工品としての幅広さを知った。そして、青空の下、自然に囲まれ大切に手入れされた古民家でいただいた出汁や船人飯の味はまた格別。このツワーを企画・準備してくださった方々に感謝。そして、奥田シェフとかごしまイタリアン会の若手シェフらによるかつお節や鹿児島の食材をフルに使ったメニューづくりと試食会というおまけまであり両手に抱えきれない収穫が。本物の味を後世に伝承していこうとする思いや目の前にある食材に感謝し余すところなく活かしていこうとする方々の思いに触れ、今日の収穫を1人でも多くの人たちに伝えたいと感じた幸せな1日だった。

福島 洋子 プロフィール

出汁の王国・鹿児島プロジェクトのご意見番である鹿児島女子短期大学名誉教授福司山エツ子先生に師事。大学・短大・専門学校等の非常勤教師として「子どもの食と栄養」「栄養生化学」を担当。鹿児島大学男女共同参画センター研究支援員、鹿児島大学教育実践センター研究協力員でもあり「家庭、学校、地域をつなぐ食生活教育」「鹿児島の食材を味わい味覚を育てる」等をテーマとして研究している。管理栄養士、栄養教諭、社会福祉士の資格を持ち、公民館・イベント等の料理教室講師および食生活に関する講演等の講師としても活躍している。

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