初のフランスへ行って(特別寄稿:梛木春幸氏)テスト

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44年と6ヶ月生きてきまして、初めてのヨーロッパフランス(パリ、マルセイユ、エクス・アン・プロバンス)と行ってきました。しかも、観光では無く仕事(フランスに於ける鹿児島の食文化の紹介と料理セミナー)として講師としてです。フランス人の味覚に鹿児島の食はとてもあう事も知りました。そして、親日派も非常に多いという事も感じました。材料も、全て鹿児島からは持って行けず、フランスで調達しましたが魚はあまり良いのは無かったですが、その他は食材も豊富でした。物価は、日本より高めでランチがだいたい日本円で1,500円から2,000円程でした。そして、お昼時間が2時間程あり、ゆっくりとテラスで食事しています。学校も給食が無く、家でゆっくり家族で食べるらしいです。そして、実演講演を聞きに来られたフランス人は親日派だとは思いますが箸の使い方がとても上手で綺麗な持ち方に感心しました。そして、私の包丁さばき、大島紬の着物、下駄などなど全てに興味感心を持つフランス人がとても多く、パリでも、エクス・アンプロバンスでも、マルセイユでも最後皆様を見送りしましたが、『本当に感動しました!』『とても美味しかったです!』『来年も必ず来てください』などなど勿体無い心のこもったお言葉を頂きました。マルセイユは、ブイヤベースがうまれた土地で魚介類の出汁にとてもプライドを持っていますが、私が日本料理の魚の出汁の取り方で、お吸い物を出してみると、かなり関心が高かったです。星付きのシェフも出汁の取り方をしつこく聞いてきました(^^;;鰹の出汁にも関心が高かったです。

切っても切れぬ仲!!「出汁と水の関係」についてテスト

福島洋子の出汁レポート第2回

鹿児島の出汁いろいろ

(“鰹節”ならぬ)“黒豚の節”をスープに「特性黒ぶしラーメン」のご紹介と「出汁と水」 について

今回、鹿児島市谷山中央で、創業25年のラーメン店「夢一屋(ゆめいちや)」を営む前野氏にお話をうかがうことが出来た。前野氏こだわりのラーメンの出汁と、水にまつわるエピソードも含めてご紹介したい。
豚骨ラーメンも提供しているが、黒豚のもも肉を10日から~15日間燻煙した“鰹節”ならぬ“黒豚の節”でとった出汁を用いた「特性黒ぶしラーメン」等を提供している前野氏は、「夢一屋」でしか食べられないラーメンを作りたいという思いから、「特性黒ぶしラーメン」の開発に繋がった。食べる直前にラーメン丼に、粉末にした“黒豚の節”を加え熱い鶏ガラスープを注ぎラーメンを盛る。さっぱりとしたコクのあるラーメンで美味しい。前野氏のラーメンの特徴として重要な点は他にもある。幻の豚、鹿児島黒豚の源流といわれる奄美島豚をスープや焼き豚に使用している。奄美島豚はスープの出かた、質も違いコクがあると言う。そして、自分達が用いることをきっかけに美味しい貴重な奄美島豚の存在を知ってもらうことで飼育や需要が増えて種を絶やさないようにしたいという熱い思いもある。
さらなる夢は、無化学調味料のラーメンを提供することだと訴える。しかし、試作してわかったことは無化学調味料のラーメンはスープを濃厚に煮詰めていく必要があり、材料コストがかかり1杯1300円で売らないと合わないそうである。東京で成功したTV等のマスコミに登場するおなじみの有名ラーメン店の経営者も無化学調味料のラーメンには「手を出すな!つぶれるぞ!」とアドバイスする。実際、無化学調味料のラーメンに挑戦した前野氏の仲間には、経営難に陥り廃業していっている者も何人かいる。東京の中心地で人気店になれば、まだ経営的に成り立つのかもしれないがと。
前野氏も、水の影響に悩み試行錯誤されたおひとりである。麺づくりの粉に混ぜる“かん水”を作る時に、初め水道水をそのまま使用していたら、麺の仕上がりにムラが有ることに気付いた。そこで、製麺用の粉の仕入れ先である粉製粉会社と相談を重ね、いろいろな方からのアドバイスも受ける中で水道水に処理を行い使用するようになった。使う水はたっぷりの備長炭でろ過を行い、機械による電子の力を利用しクラスターを小さくしたものを使用している。ラーメンに使うスープや他の具材等もこの水を使用して調理する。それから、麺の仕上がりにムラもなくなり安定した麺を提供できるようになったと、それ以前のお客さんには、申し訳ないことしてしまったと悔やまれている。
前野氏曰く、美味しい湧水の出る場所でラーメン屋を開けたらベストだが集客のための立地条件も経営には不可欠であると。また、水道水の処理についても他にも方法があるのかもしれないが、現時点ではコスト面も考慮しこの方法を採用しているとのことであった。

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ラーメン作りを初めとする料理に対する水の影響

水について

京都の裏千家専門の茶懐石料理屋「辻留」の2代目であり東京に進出し、日本の伝統料理の普及につくし現在の懐石料理の基礎を築いた辻 嘉一氏(1907-88年)と、“日本のフランス料理の父”と称されるホテルオークラ東京初代総料理長の小野正吉氏(1918-97年)が、対談で水は料理の基本であると述べている。辻氏は裏千家の出張料理の際も、自宅の湧水を運んで料理をされていた。料理を出す場所での水には注意を怠らなかった。
去る12月8日に行われた出汁の王国・鹿児島プロジェクト推進協議会においてイタリア料理の第一人者、濱崎龍一氏からのアドバイスの中でも、鹿児島の誇る美味しい水、超軟水は、“水分子の集団”(クラスター)も小さく出し素材の旨味を引き出す、これが鹿児島の武器になると述べている。
水の味を左右する要素にはいくつかある。その1つとして、水の中の無機質の含有量がある。水に溶存するカルシウムやマグネシウムなどの無機質の含有量によって水の味は左右される。この無機質の含有量によって水は軟水、硬水の2つに大きく分類される。日本の水は、一般的に無機質含有量が比較的少ない軟水である。西欧諸国の水はその地質の影響を受けて無機質含有量の多い硬水が一般的である。また、近年、おいしい水や熟成した食品のおいしさは、“水分子の集団”(クラスター)の大きさと関係していることが研究及び分析により明らかになった。クラスターの小さい水は、飲用した時も口当たりがやわらかく体内での吸収もよいと言われている。つまり、クラスターが小さいと食材の中まで必要な水分が十分に浸透しやく、その水に含まれる出汁の旨味や調味料が十分に浸み込むので料理の味を高めることに繋がると言えるだろう。

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福島 洋子 プロフィール

出汁の王国・鹿児島プロジェクトのご意見番である鹿児島女子短期大学名誉教授福司山エツ子先生に師事。大学・短大・専門学校等の非常勤教師として「子どもの食と栄養」「栄養生化学」を担当。鹿児島大学男女共同参画センター研究支援員、鹿児島大学教育実践センター研究協力員でもあり「家庭、学校、地域をつなぐ食生活教育」「鹿児島の食材を味わい味覚を育てる」等をテーマとして研究している。管理栄養士、栄養教諭、社会福祉士の資格を持ち、公民館・イベント等の料理教室講師および食生活に関する講演等の講師としても活躍している。

本物は本物を知る「世界的イタリアンシェフと本場枕崎かつお節のランデヴー」テスト

福島洋子の出汁レポート第1回

去る7月1日(月)、イタリア料理の奥田政行シェフと,かごしまイタリアン会の若手シェフらが枕崎のかつお節工場にやって来た。奥田シェフはイタリアスローフード協会から世界の料理人1000人に選出される(日本からは11人)著名なシェフ。奥田シェフの料理のモットーは、「ソースをなるべく使わない」こと。素材の味を大切にして、現在、出身地の山形県をはじめ東京銀座(監修)、スカイツリー内(監修)に店舗を展開。

まず、昔ながらの製法を守る的場水産鰹節工場での製造工程の見学からスタート。奥田シェフらは、鰹の解体から本枯れ節のカビ付けまでの全工程に質問を投げかけ、かつお節は当然ながら解体後の内臓なども手にとり、これまでの経験・知識に五感も総動員して食材を知り尽くそうとする姿がみられた。
次の枕崎おさかなセンターでは、午後の試食会用のメニューに組み合わされていくのであろう鰹の加工品や水揚げされたばかりの鮮魚が奥田シェフによって選ばれていく。
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次は、枕崎市美山町の自然に囲まれたNPO法人子育てふれあいグループ”自然花”の民家をお借りして出汁や船人飯を味わった。まずは、かつお出汁の引き方を削り方、節や昆布との組合せ、水の種類、火加減、温度、秒単位の時間、引いた後の味の変化等ととことん追求している中原水産の中原さんらが目の前で引いてくれるかつお出しをいただく。最高の本枯れ節の香りと味を堪能する。また、原料とその出汁が並べられたブースでは本枯れ節をはじめ5つの出汁の味ききや、普段は中々見られない出汁の原料を見ることできた。ここでも奥田シェフは自らかつお節を削り、出汁を味わい出汁ごとに旨味、酸味などの度合いを5段階で評価しながら味をきき比べていく。

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ツアーの最後は、鹿児島市内の日本ガス「キッチンスタジオ ほのほの」で、奥田シェフとかごしまイタリアン会の若手シェフらによるかつお節や鹿児島の食材をフルに使ったメニュー考案と試食会。若手シェフらとコラボし料理が1品1品作られていく。かつお出汁は下味や隠し味に、鰹の塩辛はアンチョビのようにパスタソースに加えられる。なまり節はにんにくと組み合わせられパスタの具に相性抜群。すべての料理が食材の持ち味を生かした飽きの来ない味に仕上がっている。
さらに、奥田シェフは、かつお節工場で今まで処分していた焙乾後の荒節からでる骨やヒレなどのかすも見逃さずキッチンスタジオに持ち帰っていた。これを粉末にして屋久島の野生鹿のローストにまぶす。屋久鹿の肉は、焙乾中の樫の木やクヌギのよい香りで燻煙された荒節の粉に包まれ獣肉臭が中和されてまるでスモークされたような絶妙な味に仕上がっていた。



美味しいかつお出汁は、削り立てのかつお節でとった引き立ての出汁の香り、旨味を味わうのが一番である。これは、奥田シェフの言葉「料理は口に入れる一瞬が命。」に通じるのではないだろうか。「その一瞬のために長い時間をかけて研究し、命をかけている」とシェフはいう。かつお節づくりの職人たちは、本枯れ節が出来上がるまでに半年から1年以上かけてわが子を育てるように心と手をかけ向き合っている。かつお節づくりの職人たちの思い、奥田シェフ、若手シェフらの食材や料理にかける思いが伝わってきた。
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的場水産鰹節工場では、本枯れ節が出来上がるまでの全工程に丁寧な説明をいただきかつお節づくりに対するこだわりとご苦労に触れ、美味しいかつお出しを届けたいというと誇りと熱い思いを感じた。枕崎おさかなセンターでは鰹の加工品としての幅広さを知った。そして、青空の下、自然に囲まれ大切に手入れされた古民家でいただいた出汁や船人飯の味はまた格別。このツワーを企画・準備してくださった方々に感謝。そして、奥田シェフとかごしまイタリアン会の若手シェフらによるかつお節や鹿児島の食材をフルに使ったメニューづくりと試食会というおまけまであり両手に抱えきれない収穫が。本物の味を後世に伝承していこうとする思いや目の前にある食材に感謝し余すところなく活かしていこうとする方々の思いに触れ、今日の収穫を1人でも多くの人たちに伝えたいと感じた幸せな1日だった。

福島 洋子 プロフィール

出汁の王国・鹿児島プロジェクトのご意見番である鹿児島女子短期大学名誉教授福司山エツ子先生に師事。大学・短大・専門学校等の非常勤教師として「子どもの食と栄養」「栄養生化学」を担当。鹿児島大学男女共同参画センター研究支援員、鹿児島大学教育実践センター研究協力員でもあり「家庭、学校、地域をつなぐ食生活教育」「鹿児島の食材を味わい味覚を育てる」等をテーマとして研究している。管理栄養士、栄養教諭、社会福祉士の資格を持ち、公民館・イベント等の料理教室講師および食生活に関する講演等の講師としても活躍している。