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出汁は、味の豊かさを知る、人生の楽しみ

さつま麺業株式会社 代表取締役社長 山下大介さん インタビュー

さつま麺業株式会社 代表取締役社長 山下大介

インタビュー:2012年12月20日

2011年冬、鹿児島の食をとりまく作り手や有識者たちによって、あらゆる料理の基本である「出汁」をテーマにした新しい試み『「出汁の王国・鹿児島」プロジェクト』(以下、出汁プロジェクト)が誕生しました。
このプロジェクトは、食の知識人や料理人から、農家や漁師、加工業、そして家庭で料理をされる方まで多くの方たちとつながり、鹿児島で作られる豊かな食材を暮らしに活かし、その魅力を広く伝えていきます。

インタビュー第一弾は、出汁にこだわり、鹿児島の食材を知り尽くす山下大介さん。40年以上も地元鹿児島の飲食業界で活動し、この出汁プロジェクトを牽引する実行委員会委員長でもあります。そんな山下さんに、この出汁プロジェクトについて、また鹿児島の「出汁」の魅力などをお聞きしてきました。

数々の文化が交差した歴史と豊富な食材、
上質な食文化が花開いた場所、鹿児島。

ー昨年、鹿児島で誕生した「出汁の王国・鹿児島」は、食材の豊富なこの地域ならではの非常に興味深いものです。ぜひこのプロジェクトが立ち上がったきっかけを教えてください。

まずは、私自身の気づきからお伝えしますね。ラーメンを家業としていて、鹿児島のラーメンは他の県より高い、と、お客様から言われます。自分たちが儲けている訳ではないのにどうしてだろう、と考えたときに、麺や野菜などの具を多く使っていると同時に、特にスープにコストがかかっていることに気がつきました。
出汁の材料は、まず豚骨。そして鶏です。鹿児島ラーメンは豚骨スープと思われがちですが、半分は鶏スープです。しかも、鶏ガラだけでなく丸鶏(鶏を一羽そのまま)使った濃いスープが好まれます。そしてさらに本枯れの鰹節やその他魚介、昆布や野菜のエキス等本当にたくさんの食材で作った出汁を組み合わせて基本となるスープを作り上げていきます。
豚骨に鶏、椎茸や昆布等、実は鹿児島には数種類の出汁があるのです。鹿児島の出汁は、元々あった鶏ガラの旨味を楽しむ県民性に、豚骨の文化が流れ込んでいる。だから両方必要。そして、食材の豊富な土地柄から植物性の出汁も取り入れる。つまり鹿児島のラーメンはたくさんの種類の出汁を使った「旨味のごちそう」ということなのです。
鹿児島は食材の宝庫であり、豊富な種類の出汁の文化がある、これは日本にとっても、また世界的にも注目されている特徴なのでは、そう気づき、これを活かしたプロジェクトをしよう、と思ったのです。

ーそんなにたくさんの材料を使っているとは知りませんでした。鹿児島は独特なのですね?

さつま麺業株式会社 代表取締役社長 山下大介さん

鹿児島は、フランシスコ・ザビエルや鑑真和上の上陸、鉄砲の伝来、また黒船も浦賀に着く前に鹿児島を訪れているという歴史が有り、日本を目指したすべての人や物が島づたいに鹿児島を経由する——、それが太古から続き、繰り返しています。
そういった食を含めた文化の交流地点でありながら、鹿児島は食材の大産地であることも相まって、特別な食文化ができました。
鹿児島は地元での収穫・生産量について言うと、鶏は日本一、鰹節は国内3大産地のうちの2つ(枕崎、山川)が県内にあり、豚も日本一の産地と良質な材料が揃っています。また、お水も、生産量・購入量ともに実は日本一です。雨も多く、火山灰のシラス台地で良い水が採れるというわけです。

—そのようななかで鹿児島では子どもの頃から美味しいものに普通に触れていて、ぜいたくな環境にある、という発見がこのプロジェクトの発端ということですね。

そうですね、それがひとつ基本であり、また世の中が便利なものから「食を見直す」時代になってきている、ということも大事な理由です。口にするものが手作りであることや、また食事を作る時間そのものを楽しむこと、日本人が得意とする食べ物、または食をともにする家族へ感謝することなど、それらをつなげるひとつの代表的要素が「出汁」だと思っているのです。
ぱぱっと簡単に作れる化学調味料も便利だけれど、コトコトと時間と手間をかけて旨味を取り出して作る出汁をいただいて、「おいしいね」「やさしいね」と旨味や香りを語らう。レベルが高い料理を作るのでは技術が必要ですが、出汁ならきちんとやれば誰でも作ることができる、料理の基本です。
また、おいしさというのは、教育ともつながります。旨味をきちんとわかる、この旨味の素材は椎茸だね、鶏だねと、香りや奥深い味わいを感じること、それは人生の楽しみを学ぶことだと思うのです。身の回りのいろいろなことを感じるようになり、そして健康にもなる、そういうことなのです。

一方で、現在、鹿児島の食はとても特徴が有るのですが、それに気づいていない、またその魅力をうまく表現できていないので、「出汁プロジェクト」を切り口に食の豊かさを伝えていきたいと思っています。さらに、旨味は「Umami」として世界の料理人が取り入れていて共通語になってきている。それに香りを楽しんでより豊かに食を感じることができれば——、「出汁プロジェクト」は鹿児島だけではなくて、すべての人に恩恵のあるプロジェクトだとも思います。

さつま麺業ラーメン

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