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ふだんの料理がグンと美味しくなる! “目から鱗の出汁づかい”満載の、 「鰹家おかみさんのレシピ」がスタートしました。

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「出汁を取るのは面倒だし、上手に取るのは難しい」と思っていませんか? それは大きな誤解。出汁って、思ったよりも簡単に取れるうえ、毎日の料理を美味しく、楽にしてくれる強い味方なのです。そんな、さまざまな出汁づかいを手軽な料理とともに紹介してくれる、枕崎の『伝承工房 鰹家』のおかみさん、的場真美さんの連載コラムが7月から始まりました。実は、真美さんもかつお節については素人だったとか。だからこそ、出汁初心者でも美味しくて楽につくれるレシピが誕生しました。これから紹介する料理を、よりよく取り入れていただくために、「知っておくと、こんなに便利」な出汁づかいのコツや魅力をご本人にうかがいました。

大阪から嫁ぎ、かつお節と出汁の魅力に開眼

1956(昭和31)年に創業し、鹿児島県枕崎にある自社工場でかつお節を製造、加工、販売する的場水産株式会社は、地元では全国鰹節類品評会農林水産大臣賞などを受賞する老舗として知られ、自社ブランド『伝承工房 鰹家』を展開しています。的場水産の嫁として大阪から嫁いできた真美さん。出汁の美味しさに目覚めたのは、結婚を機に枕崎で暮らすようになってからだそう。もともと料理は好きだったものの、それまでは、わざわざかつお節を削って出汁を取ることはなく、出汁の本来の味をわかっていなかったと言います。

そんな真美さんが、「外食も好きなのですが、関西風のうどんを食べたいと思っても、食べられるお店を見つけるのは容易ではなく、それなら自分でつくっちゃえと、自ら出汁を引いて料理を作るようになりました。そうしたら驚くほど美味しくて、私でもできるんだ!って感激したんです。出汁の味が料理を左右することに気づいてからは、料理がますます好きになり、出汁にはまっていきました」と話してくれました。

出汁をストック。これで料理が美味しく、楽になる。

「これを使って料理すれば、お店にも負けません」という出汁は、かつお節と昆布がベース。週に1回ほどの割合で、まとめて出汁を取り、冷蔵庫にストックしておくのが真美さん流です。
「料理のたびに出汁を取っていたのでは、つくる気力が萎えてしまいます。でも、出汁のストックがあれば、卵をかき回して具を加えるだけで茶碗蒸しがつくれますし、市販の鍋スープを使わなくても、出汁に味噌を加えれば味噌鍋、キムチを加えればキムチ鍋と、いろんな鍋があっという間に完成します。出汁を取るのは面倒ではなく、手が空いた時にまとめて取っておくと、その後の料理が楽になるんです。

「当時は、かつお節はどのようにしてつくられるのか、また、かつお節に種類があるということも知りませんでした」という真美さんは、かつお節屋に嫁いでその奥深さを知り、自分の覚書として2009年からブログをスタート。次第に他の人にも知ってもらいたいとの気持ちが強まり、facebook などのSNSを利用して、出汁に興味のある人たちと情報を共有し、さまざまな人とつながっていったことで、さらに世界が広まっていったと語ります。

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健康的で、手間も精神的にも負担のない料理が鉄則

現在は、『伝承工房 鰹家』のおかみさんとして忙しく働いていますが、独身時代は大阪で薬剤師として働いていたという真美さん。「私たちの健康は食事との関係が深く、毎日食べている料理が健康を左右します。でも、天然の出汁を使えば塩分なども抑えられるので、凝った料理をつくらなくても、体にいい料理が簡単につくれます」と、健康を守る出汁の力にも注目しています。

実は真美さんは、「かんぶつマエストロ上級」、「枕崎かつおマイスター」、「だしソムリエ3級」といった、さまざまなスペシャリストの顔も持っています。興味のあることをとことん突き詰めていく性格だそうで、「もっと知りたいと思って勉強したら資格がついてきた」と笑いますが、彼女がつくる料理は、「料理のプロセスがシンプルで、時間も手間もかからず、精神的に負担にならない」というのが鉄則です。

また、出汁はかつお節にこだわらず、いろいろな乾物を使います。保存食の乾物は健康食材のうえ、それぞれの旨味の相乗効果のおかげで、調味料をたくさん使わずにすむので一石二鳥。健康は気になるけれど、「忙しくて料理をする時間がない」、「料理が苦手」といった人でも取り入れやすいというのも大きな魅力です。

知っておくと便利な、おかみさんのルール

それでは、真美さんの出汁取りのルールを紹介しましょう。出汁は、水1.5リットルに対して、昆布15g、かつお節30gがベース。昆布は5gずつカットしておき、水:昆布:かつお節=10:1:2の割合と覚えておくと便利です。出汁を取る際は、前の夜に、水を入れた鍋に昆布をつけておき、翌日、鍋を火にかけ、沸騰する直前に昆布を引き上げたら、かつお節を入れて火を止めます。そのまましばらく置き、漉して粗熱を取ってから冷蔵庫に保存すれば完了。

「少しくらい昆布を入れたまま沸騰させても問題ありません。私は布巾を使わずにザルで出汁を漉していますし、冬場は濾さずに鍋ごと冷蔵庫に入れ、お玉ですくって使います
と真美さん。話をうかがっていると、出汁へのハードルがどんどん低くなり、試してみたくなるから不思議です。

出汁の味を整える調味料もいたってシンプルです。関西出身の真美さんが使うのは、薄口醤油、塩、みりんの3種類。味を濃くしたい時は薄口醤油を、甘くしたい時はみりんを多めに入れれば、失敗がなく、自分好みに仕上がると言います。さらに干ししいたけなどの他の乾物を追加すると旨味がより深まり、ごま油を入れると中華風に仕上がります。

出汁の世界が広がる料理が満載

以前は、かつお節を削って出汁を取るのは面倒という人が多かったようですが、最近は、かつお節を削ることがブームとして広がりつつあるようです。特に若い世代のお母さん方の関心が高く、「子どもが削りたてのかつお節を気に入り、パック入りの削り節を食べなくなった」という声も多く寄せられるそうで、『伝承工房 鰹家』では、高級な本枯れ節と一緒に削り器がよく売れていると言います。

一方で、出汁を取った後の出汁ガラの処分に困るという声もあるそうです。
「出汁ガラでかつお節のふりかけをつくる人も多いですが、そればかりだと飽きてしまいますし、正直言って2番出汁を取った後のかつお節は美味しくありません。それを毎回取っておくのは精神的に負担になるので、私は心置きなく捨てています。ただ出汁ガラでも昆布は美味しいので、捨てずに活用します。コラムでは、出汁ガラの昆布をお酒がすすむ佃煮やチップスに変身させる方法も紹介しますので、参考にしてください」と真美さん。

出汁は吸い物や味噌汁、鍋料理だけでなく、卵焼き、野菜炒めの味付けとして、また、炊き込みご飯、煮魚、肉じゃがなど、水で煮炊きする代わりに使うと旨味が増して美味しくなります。このように、出汁というと和食のイメージがありますが、レシピには、イタリアンなどの洋食もたくさん登場します。7月からスタートする、目から鱗の出汁づかいが満載の『鰹家おかみさんのレシピ』をぜひお楽しみください。

鰹屋おかみさんのレシピはこちら

インタヴュー・文 御門あい

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